陸奥:男(町の役所の部長)
長男:小学校6年生
田の介:男の弟
田の介の妻:男の弟の妻
後添:料理担当のお手伝いさんだった女
後沿いの娘:中学3年生
浅はかそうな男:庭師の男
元ネタは「今昔物語」、勝手に解釈!今で考えて見たらこうなりました。
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生き埋めにされた子が助かる話より
助かるには運が必要なのかもしれない
男の職業は公務員である、父も祖父も曾祖父も公務員だったから、絶対ではないが、親を見て育ったので公務員になって役所で働いている、小さい町であるため、顔見知りが多く、男の家が代々公務員になっているのは町の皆も良く知っていた。
男は真摯に町の為を思い仕事に邁進していた、気が付けばもう初老の年だった。
妻はいるが子はいない、出来ないなら出来ないでしょうがないと思い始めた頃になんと妻が懐妊した、男は地に足が着かないくらい喜び、喜ぶ夫を妻は嬉しく見ていた。
子供は無事産まれ、両親ともにそれはそれは息子を可愛がった、男には弟がおり、その夫婦の間にも子供がおらず、唯一の甥であるその子を夫婦で可愛がった。
子供の為に、と男はさらに仕事に力を入れ、疲れを子供の顔を見ることで癒した。
ある日妻の顔色が悪かったので男は病院に行くことを薦めた。
子供の面倒があるから、と妻は言うが子供だけ元気でもお前が具合悪いのは嫌だと、男は説得し妻は病院に行くことになった、妻はそのまま入院となりあっけなく亡くなってしまった、病院に行ったときにはもう手遅れの癌だったのだ。
医者が言うには「そうとう痛かったはずです、我慢強さが逆に…。」とのことだった、妻は最後まで息子の心配をして去って行った、男は何が何でも息子を幸せにするぞ、と弟夫婦に協力してもらい育児に力を入れたおかげか、息子はスクスクと育った。
男は年の割に早く部長になり、事務方を取り仕切っていた、小さい町なので役所の人間もそう多くなく、本人曰く、部長と言うより雑用係だなぁ、と笑うが、いなくてはならない人間とされ毎日遅くまで仕事をしていた、ちなみに残業代は出なかった。
だが役職と先祖代々からの資産から不労所得も多く、生活に困ることはなかった、お金に苦労の無い生活だったが、面倒を見ていてくれている弟夫婦がしっかりした人間だった為、子供もまっすぐ素直に育ってくれ、男はほっとしていた、男の家には使用人もいたが教育は弟夫婦任せになって、男は申し訳ないと思っており、隙あらばお礼を使用と狙うので、弟夫婦は苦笑しながら辞退するばかりである、身内なのだから、と強い結束は結ばれるばかりだ。
ある日ハウスキーパーの女性がやはり子供には母親が必要だと、男を口説き始めた、女は中学生になったばかりの娘を育てながらとても良く働いていてくれたので男は気心が知っている方が良いし、やはりこれから中学、高校と上がるのにすべて弟夫婦にお願いするのも申し訳なさすぎる、自分が動ければいいが、年々仕事は増え身動きが取れない。
男は女と結婚することにした、歳も歳なので身内だけの顔合わせだけで式は済ませた、女も別段文句を言う言わけでもなく、男の子供も可愛がってくれているようなので、更に男は仕事に埋没していった。
***************
女は結婚した当初は、これで娘にも楽をさせてやれる、男の子も恥ずかしそうにしながらも自分の言う事も聞いてくれる、満足したつもりだった。
日にちを重ねていくと、生まれた時から愛され、不自由をしたことが無い新しい息子、結婚してすぐに夫のモラハラに苦しまされ、産まれた娘も愛してくれず、逃げるように家を出てお金をかけてあげることがなかった娘。
僅かずつ気持ちに齟齬が出てきた、息子を心配しての結婚だったはず、男もまじめに働き誠実そうな人だと思い口説いたはずだった。
『娘だけ幸せにしてやりたい。』
その気持ちが態度に出ていたのだろうか、娘が少しずつ良い物を欲しがるようになった、女も少しくらい使っても、と言うままに買い与えていった。
女はだんだん息子が邪魔になってきた、この子がいる限り娘が全て手に入れることが出来ない、どんどんと息子が娘の幸せを奪う敵に感じてきたのだ。
だがまだ理性も有り、だめだ、この子も幸せにならないと、自分を雇ってくれた男に恨みも何もない、後妻になり、家の事も仕切らせてくれる、お金も自由に使う事も出来る、このまま育てればこの子も親孝行してくれるだろう、と何回も自分に言い聞かせた。
欲と言うのは果てしないもので、とうとう綺麗毎で自分を誤魔化すことが出来なくなった。
女はまず通いの庭師を口説いた、もし子供を始末してくれたら、娘と結婚し、男の財産が使いたい放題だ、と甘く囁いた。
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最初の頃、庭師の男は雇い主の妻を鬱陶しく思っていた、自分は仕事をして帰って晩酌が出来ればそれでいいと生活してたいた。
何より自分には妻がいる、子供はまだだが、娘か、無理しても年の離れた小娘と思えるような年齢の小娘と結婚しなければならないのか?必要ない。
男は妻の言葉に耳を貸さなかったが、だんだんと物を渡されるようになった、最初はちょっといいハムやらチーズやら、晩酌がすこし豪華になった、そのうち着る物を貰うようになった、買っても着なかった旦那さんの服だと言っていた、いい生地で服に着られているような気持になった。
流石に下着を貰ったときは妻が顔をしかめて浮気を疑われた、良い物をくれただけなのに失礼だ。
ボーナスが少し多かった、奥さんに「良く働いてくれてるから貴方だけ特別よ。」と言われた、そうか、俺はそんなに働いているのか。
その後奥さんからお酒を貰った、一度は飲んでみたい大吟醸だった、持って帰ると妻は嫌そうな顔をした。
この前庭の木を植え替えてたら「まぁ、こんな大変な力仕事を!」と奥さんが5万円くれた、貰うわけにはいかない、と辞退しようとしたが「あらやだ、こんなはした金!気にしないで?」と言われた。
そうか、奥さんから見たら5万円は端金だったのか。
俺は妻と離婚した、奥さんから物を貰うたびにガミガミと怒って来て鬱陶しかった、うるさいから貰った金は黙っていたが、よいお酒を買ったらばれた、おかしい、怪しい、浮気じゃないならもっと用心して、と喚き散らしたので追い出した。
弁護士を立てられて慰謝料を請求された、奥さんに相談したら奥さんが払ってくれた、あぁ、もう後戻りは出来ないかもしれない。
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毎日に不自由を感じたことはなかった、自分だけ母親がいないのは寂しく思う事もあったが、途中で母親と言う役割の人が現れた。
いつもご飯を作ってくれていた人だ、坊っちゃんから名前呼びになった、なんだかくすぐったくてすぐに部屋に戻ってしまった。
なんとなく、みそ汁を飲みながらコーンポタージュが飲みたかったと言ったら、次の食事でコーンポタージュが出た、から揚げ食べたいと言ったら、翌日の夕飯がからあげだった。
もしかして言う事を聴いてくれる人なのかもしれないと思った、父さんには女性は弱いから守ってあげなさいと、と言われてたから大きくなったら守ってあげないといけないと思った。
最近叔父さんと叔母さんに会ってないな、と思ったら庭師の人に、
「坊っちゃん、叔父さんたちに会いに行ってますか?最近姿を見ないような…。」
庭師の人が思うくらい会ってなかったんだと思い、なんだか会いたくなった。
「今時間あるので叔父さん達の家に送りましょうか?」
と言ってくれた、土曜日だったから叔父さん達も家にいるかもしれない、会いたくなったから即答で行くと答えた。
今思えば叔父さんや叔母さんが暇かどうか確認もしなかったのもおかしいし、(休日出勤してた)父さんに連絡してないのもおかしい、悪い人が自分の傍にいるって思いもしなかったんだ。
途中にある山の前で庭師の人は車を止めて、山芋を掘って持って行こうと言った、坊っちゃんはぬかごを取って下さい、と言われた、ぬかご?と聞き返すと山芋から出ている蔓についてる山芋の赤ちゃんだと言われた、炊き込みご飯にすると美味しいらしく、きっと叔母さんが喜びますよと言われた。
僕は庭師の人が見つけた山芋の蔓についている小さな芋みたいなのを一生懸命に引きちぎった、力いっぱい握っても丈夫なお芋だった、そうしたら視界が廻ったんだ、気が付いたら穴の中に居た。
庭師の人が「スマナイ、スマナイ」と言ってたけど僕はビックリして最初声が出なかった、でもいきなり土が降って来て少し埋まったらなんだか怖くなって必死に叫んだんだ。
「やめて!助けて!ここから出して!!」
でも庭師の人は何も言わなくなって、枝を拾ってきて蓋にされたんだ、暗くなって何かが降って来たからきっと枯葉をかぶせたんだと思った、僕は傍にある何かにしがみつきながら必死に叫んだ。
「誰か!助けて!」
体の上にある土をどかしたかったけどどうにもならなくて、何かに捕まったまま口に土が入らないように、なんとか下を向いて叫び続けた、声は土が吸っていたのかもしれない。
***************
いい天気だと思い、ゴルフの打ちっぱなしに行こうと思った、妻も軽くいってらっしゃいと言ってくれたので行くことにした、途中にある山の前でふっと、妻はぬかごが好きだったなと思いつい車を停めて山に入った。
無事に見つけた、誰か取った後なのか下の方はちぎられていた、俺の山に誰か入ったなと思ったが、揉めるのも面倒くさいので気にするのをやめた、しかしなんだか立ち辛い、ふかふかと言うかグラグラと言うか、足元が安定してない。
「……て、だ……、た……」
かぼそい声が聞こえた気がした、背中が粟立つ、今までお化けとか霊とか見たことも聞いたこともない、足元から這い上がるような声に思わず後ずさり、しゃがみこんでしまった。
目線が低くなったら目の前の土がおかしい気がした、そう言えば足元がぐらつく感覚があったと思い、イノシシ用の落とし穴か?と思ったが枯れ草がかぶさってるのに声が聞こえるのはおかしい、急いで枯葉を除けるとまぁまぁ太い枝が渡して有り、蓋をしていた。
枯葉をどかしただけでさらに聞こえるようになった、タスケテと聞こえる、そして聞いたことある声に思える、俺は必死に枝をどかし、あからさまにおかしい土を掘った、そこにはなぜか山芋を握りしめた甥っ子がいた。
俺の顔を見て安心したのか目を閉じた、
「おい!しっかりしろ!死ぬな!!」と揺さぶったら聞こえてきたのは寝息だった。
とにかくこのままではいけないと家に連れて帰り病院に行こうとしたが、なんであんな穴の中に埋められていたのか?と思うと怖くなり、とにかく兄貴に連絡をした。
「兄貴、〇〇が近所の山の中で生き埋めにされてた、これから病院行くんだけどこれるか?」
「は?え?どういう・・・・、病院はあそこか?すぐに向かう。」
小さい町なのでこういう時に頼れる病院はそうそうないので話も早く兄貴は電話を切った、〇〇の服を着替えさえる為になんとか山芋から手を離させようと妻が指を引きはがしていた、うっすらと甥っ子は目を開け、
「叔母さん、これお土産。」とやっと聞き取れるくらいの声で山芋を差し出してきた、ここに連れてくるまでにじゃまだったのでへし折っていたので子供が握った部分だけしかなかったのだが、妻はにっこり笑って、
「ありがとう、これで美味しい物作るね。」と言ったら甥っ子は安心したのか山芋から手を放し微笑んで又目を閉じた。
無事に病院に連れていき兄貴とも合流出来た、医者からも即警察に連絡すると言われ、通報をお願いした、そこで兄貴は少しお願いをしていた。
「すいません、サイレン無しで病院まで来てもらえませんか、騒々しくなると犯人が急いで逃げる気がするんです。」
警察は快く聞いてくれたようで、パトカーではなく覆面の車で刑事さんが来てくれた、制服だとバレバレになるからと。
小さい町だったからか、結果は早かった。
***************
こんな小さな子を、俺は土を入れながらだんだん怖くなってきた、全部埋める気になれずさっさと枝を渡して枯葉を載せた、怖くて怖くてとにかくここから離れたかった。
「あの子山に埋めてきてくれない?」
そう言われただけだ、あぁ、あの女の指示だと言う証拠がない、バレたら俺だけが捕まってしまう、酒を飲んで気を紛らわせようと思ったがちっとも味がしなかった。
ドンドンドン
ドンドンドン
扉を強く叩く音が聞こえる、だめだ、開けたら終わる、逃げるか?どうやって?ボロアパート2階くらいなら飛び降りることは出来る、だが何もない田舎で遮蔽物が少ない、きっとすぐ捕まる、天井裏にでも隠れるか?
ふらつく足で立ち上がり、扉を開けることになった、開けないと壊すと言われた、弁償するお金なんて俺には無い、あ、奥さんが出してくれるか?
無意識に手が扉の鍵に伸びていた。
***************
「息子と庭師の男が車で出るのを前に畑のじーさまが見てたから早かったな。」
迅速に警察が動いてくれてあっという間に犯人を捕まえることが出来た、すぐに妻と娘も連れていかれた、俺も一緒に来るように言われたのでスーツのまま着替えずにいたのでそのまま向かった、息子は入院したままなので後日警察の人が話を聞きに来るそうだ。
庭師の男の供述で妻も加担しているらしかった、妻は「知らない、何も関わってないと。」と言っていたらしいが厳しい取り調べだったのか、邪魔だと思っていたこと、お金をすべて娘に継がせたかった事、その為に男を優遇してそれっぽいことを言ったことを認めた。
直接的な示唆だと俺は思ったが、妻はだったらいいなと思っただけの独り言だと言い張ったらしい、だが男の供述から認められず実刑判決となった、元妻が出て来る頃には息子も大人になっている頃合いだ、身を守るよう強く言っておこう、来年から中学生だ、きっと理解してくれると思う。
やはり死んだ妻以外と結婚するべきではなかった、もうすぐ定年だと言う歳なのに浮ついていたのだろうか?飯も美味かったし、掃除も嫌がらなかった、そんな狂暴な部分がまったく見えなかった、違うな、見ようとしなかったんだ、仕事が忙しい、を魔法の呪文にしてたんだ。
もう少し家にいるようにしよう、俺自身も息子を守れるように息子の事を知りたいと思った、お金さえあれば幸せだといつから思っていたんだろう、あの世に行ったときに妻に怒られる所だったな。
後妻とは別れ元娘も親戚と言ってた人に引き取ってもらった、好きにお金を使う生活を知ったあとで普通に戻れればいいが…、だがもう関係ない。
弟の嫁が、息子の服のポケットに入ってたぬかごを入れてご飯を炊いたら嬉しそうに食べていたな、俺も料理を学ぼう。
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その後①
息子「あ!僕が着てた服のぽけっとに芋が入ってたんだけど!」
叔母「大丈夫、取っといてあるよ。」
息子「良かった、あれ叔父さんと叔母さんへのお土産なの!」
その後②
医者「埋められていた為の低体温症の心配と疲労だったのでもう心配ないです、ただ手がかぶれていたのでお薬出しておきますね。」
父「山芋にかぶれたのか。」
その後③
2年後
息子「父さん、山芋掘って来たよ!」
父「せめて軍手して掘って来い!かぶれるぞ!」
息子「うん、痒いね。」
父「なんでそこまでして掘ってくるんだ…。」
息子「命の恩人な気がするんだ、美味しいし。」
父「そのぽっけのふくらみは。」
息子「うん、ぬかご!叔母さんに炊き込みご飯にしてもらおう!」
父「中学生なのにしゃれっけの一つもないのか……、残念なくらい俺の息子だなぁ(笑)」
感想
読んでいて、男が少しでも罪の意識があってよかったと思いました、本の中でも母親も娘も追い出されます、死んだら目覚めが悪いという理由でしたが、女性二人で追放はもう地獄行きか、死しかないように思いますが、実質国外追放って見えないとこで死んでくれ、じゃないかと思ってます、判決とは言え、被害に合った人が思い悩ませないための配慮かな?と、でも子供殺そうとしたなら打ち首にさえれてもおかしくないらしいので(特に上の身分の子ですしね)、運がよければ自力で幸せを使うチャンスがあったかもです、男の方は最後は書かれていませんでしたが、死罪だったんじゃないかな?と思ってます、尋問する前にすでに弟さんが刀抜いて殺しかけてたしね、色々な家や家族事情があるとは思います、子供を殺すと、死刑又は無期懲役、軽くて懲役5年以上だそうです、それだけ?と思ってしまいました、50年くらいつっこんでやれ!(それほぼ無期懲役)と思いますが、その間の生活費は税金かと思うとさっさと出て納税者になったほうが良いのか?と悩みます。
山芋は本当に掘ると見せかけて穴掘ったらしいので、季節的に11月~1月じゃないかと、なのでむかごご飯好きな私は積極的にむかごを出してみました、炊き込みご飯美味しいですよ!
お父さんは息子が生き埋めにされそうだった時は、70歳くらいだったのですが、現在でそれくらいの年齢で役所の役職につけるのかな?と思い少し若い設定です、政治家は年齢制限なさそうですが、役所は無理ですよね~、そして残業しても残業代出ないだろうと思ってます、お父さんがんばったのに後妻を見る目はなかったですね、この中では普通に再婚してますが、本の中では拒否しまくってたんですよ、今更再婚とかお金に目のくらんだ奴に相違ない!と思っていたのに、押しかけられ、家事してもらったら結婚しちゃうんだもの、詰めが甘いところはありますよね、その詰めの甘さで息子死にかけたし・・・・、お金は人を狂わすのは今も昔も変わらないのかもしれません。
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最後までお読みいただきありがとう御座いました。
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